2020年4月より民法が一部改正となります。
不動産賃貸業にとって関係があるポイントは、主に次の5点と認識しています。


1.保証人限度額の明確化

これまで連帯保証人が負担すべき金額について明確な記載は無く、ある意味無制限でした。
これを、有限にしましょうという話です。
契約の際に上限額をを明文化する必要があります。
なお、上限をいくらにするかという部分は大家の自由です。

ちなみに、管理会社さんに上限額をいくらにするのか確認したところ、1000万円という回答がありました。
一部屋で一千万円って・・・。

でも、部屋で自殺でもされた場合は、修繕だけで100万円以上。
その後の長期間に渡る家賃減額や風評被害なども考えれば、あながち法外な金額では無いのかもしれませんね。

まぁ、あくまで上限なので、実際に1000万円請求できるというわけではありませんが。


2.敷金に関するルールの明確化

敷金はあくまで預かり金です。
また、賃借人の瑕疵による損害等に使われますが、残りは契約終了時に速やかに返金するべきものです。
これを契約時に明文化しましょうという話です。

既に東京ルールとして一般的になっていますから、今更感がありあまり影響はないように思います。


3.賃借人の原状回復義務の明確化

「原状回復とは何ぞや」を契約時に明文化しましょうという話です。
経年劣化は大家負担、賃借人の瑕疵は賃借人負担。

まぁ、これも既に一般化されており、あまり影響はないでしょう。



4.一部滅失の際の賃料減額の明確化

賃借人の責任ではない理由で発生した一部滅失(給湯器が壊れてお湯が出ない等)に対して、家賃の減額をしなければならない旨が明文化されます。

ただ、具体的な減額の規模や免責期間等に関する記載は民法上にはないため、契約の際に決めておく必要があります。

個人的には、この項目が一番影響があるように感じています。

私の経験ですが、年末にお風呂が壊れて入居者様に2週間近く風呂なし生活を強いた事があります。
流石に申し訳ないと思い、その月は家賃半額にしました。

ただ、もし相手がクレーマー気質であれば、真冬の銭湯通いで風邪をひいたから慰謝料よこせとか、その期間の代替となるホテル代をよこせとか、大いにゴネられた可能性もあります。

予め契約書に明文化しておけば、このような心配は無くなりますね。

提供サービスの一部が使えなければ、その分割引するのは当たり前ではないでしょうか。
明文化は大家、賃借人両方にとって良い事かなと、個人的には思っています。


5.賃借人による修繕の要件明確化

何度も修繕要求をしたのに大家が修繕をしてくれない場合。
緊急を要する不具合の場合。

このような場合には、賃借人が自ら修繕を行っても良いとし、大家がその責任を賃借人に追求できない事が明文化されます。

まぁ、当たり前の話ではありますが、注意が必要です。
不必要であったにも関わらず「必要だった」と言われ、賃借人から費用を請求されてしまう可能性があります。

そうならないために、修繕を行う条件や対象範囲、費用、修繕時の手続きなどを契約書に明記しておくことが重要ですね。


今回の改正では、実務上は既に考慮されていたものの明確化されていなかった部分に対し、契約書に盛り込みましょうという内容が多く、実際の影響は少ないと感じています。

グレーな部分が明確化され、賃借人、大家双方にとって悪い話でもないでしょう。


ただ、本音を言えば、大家側に有利な項目も明文化して欲しいですね。

・滞納者は3か月で追い出せる
・不良入居者は3か月間改善要求の後是正されない場合は追い出せる
・不良入居者の更新を拒める
とか。

賃貸契約は、管理会社さんにおまかせの方も多く、中身を細かく見ない大家さんも多いと思います。
4月以降は自分の物件の賃貸契約書が、改正民法の内容を網羅しているのか確認する必要がありますね。


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