経営するコインランドリーでは度々ホームレスの居座りに悩まされてきましたが、中にはただのホームレスではない方もいらっしゃいます。

毎日のようにやってきて店内で飲酒するおじいさんがいました。
来店時間は昼だったり、深夜だったり。
一度来ると半日以上居座り、ビール、牛乳、パンが定番。
いつも酔っぱらっており、話をしても呂律が回らず。
でも、身なりは小奇麗でホームレス特有のスメルも無く不思議な人でした。

当初は直接お声がけをして、退店を促していました。
声をかけると素直に一旦退店。
でも30分もしないうちに戻ってくる事もしばしば。
余りにもしつこく頭に来たので、ある日ついに110番通報をしました。

まもなく警察官がやってきて、おじいさんに事情聴取。
でも、なんだか様子がおかしい。
話しぶりから警察官と顔見知りのようなのです。

実はこのおじいさん、地元警察官の間では有名な御方。
以前は当店ではない別のお店を「定宿」にしていた方で、過去にも地域のいろいろな場所を転々としており、そのたびに職務質問を受けているそうです。

ここまでの情報だとただの迷惑じいさんですよね。

でも、警察官から「軽度の認知症を患っている」とのお話を聞き、私も少し認識が変わりました。
そう、このおじいさんは認知症だったのです。

私が会話をした時の違和感も、何度も店に戻ってくる行動の異常性も納得ができました。
このおじいさんは、認知症にも関わらず身寄りは無く一人暮らし。
住んでいたアパートも家賃滞納でどうやら追い出された様子。
年金収入はあるものの、ビールとパンに消えている事は明らか。

ハッキリ言って、「保護すべき対象」の人なのです。
このまま放置をしていたら、待っているのは野垂れ死にでしょう。

以前から警察官もこの事は認識しており、役所と連携を取りながら保護施設の斡旋等を行ってきたそうですが、施設に入っても本人が勝手に出てきてしまう事の繰り返し。
しかし、警察も役所も強制的な手段をとる権限はないので、どうにもならないそうです。
本人に意思があり、拒否をされたらそれまでなのです。

私はなんだか切なくなりました。

一体どうすれば良いのか?
このおじいさんはどうすれば救われるのか?
すべてはおじいさんのこれまでの人生の結果。
自己責任と言えばそれまでですが、このまま放置して良いのか?

かと言って当店に居座られるのは大いに迷惑です。
「私の店には来ないで欲しいけど誰か救ってあげて欲しい」
我ながら情けないですが、これが本音です。

この110番の後、おじいさんは私の店に来なくなりました。
警察官の指導が効いたのかもしれませんね。

店としてはホッと一安心ですが、寒空の下おじいさんは今どこにいるのか?

普段の生活では決して交わる事のない人ですが、世の中には似たような境遇の方が沢山いらっしゃるのでしょう。

コインランドリーをやっていると、こんな「社会から抜け落ちかけの人」に出合うこともあるのです。


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